大久保由美子のメール新聞〜カナダからの手紙 vol.4

3月24日、オフ。図書館でネットサーフィンをする。予約すればタダでインターネットが使えるのだ。市内通話は35セント(30円弱)でかけほうだい。日本のようにプロバイダー契約料+電話代の二重支払いとならず、インターネット普及の土壌があるわけだ。NTTよ、日本もテレホーダイくらいで慢心せずに、時代に合わせて何とかしてくれ!

夜はもう1つのグループの日本人の男の子2人と、我らが宿、アルパインクラブでワーホリ中(ワーキングホリデービザで働いていること)の女の子が、コース受講者全員(23人!)を呼んで日本食パーティーを開いてくれる。えび、いか入りお好み焼き、肉じゃが、マーボー豆腐など、おふくろ顔負けの家庭料理がずらりと並び、久しぶりのマイルドな味に感涙。“おたふくソース”はカナダっ子にも人気じゃったよ(広島弁風に)。

3月25日〜30日

恐怖のファーストエイド・セクションがやってきた。何が恐怖かって?もちろん、最近環境ミュージック化してきたネイティブスピーカーの英語だ。いかんいかん。このセクションは毎日朝の9時から夕方5時頃まで、応急手当についての授業がびっしりで、おまけに最後にはペーパーテストまである。

授業は、「CANADIAN INSTITUTE of SAFETY SERCH & RESCUE」という団体に委任されており、キャンモアから車で1時間のカルガリーに近い“キャンプホライゾン”というユースホステルのような施設に泊まり込みでの集中講座となる。山の経験が浅い私でさえ、キツい役割は与えられなかったものの、死亡事故を含めた3回のレスキューを経験している。英語がわからないなりにも、気を引き締めて臨む。

授業は机上講習にとどまらず、生徒が患者役となり、野外でリアルな事故の状況を設定して、グループで適切な応急処置にあたる訓練を何度も繰り返す。例えば、AR(人工呼吸)やCPR(心肺機能蘇生)など。最初は人形を使って練習したが、知識では知っていることでも、実際やるとなると細かいところがわかっていないものだ。これが本当のレスキューとなると、さらに気が動転するだろうから、そんなときに反射的に動けるよう、この機会に何度でも練習しておかなければならない。

野外実習も、最初は遭難者を見つけたときの周囲の状況判断と怪我の診断だけであったが、そのうち吹き出す血の細工や、骨が突き出した怪 我まで作られてだんだん本格的になっていく上、みんなの演技も迫真もので、けっこう緊迫感のある状況の中で応急処置、移動(背骨や頭に問題なければ)まであたる。

机上講習でも、ありとあらゆる、思わず目をそむけたくなるような症例のスライドを見せられ、冷静に見られるよう、マインドコントロールに必死になる。平穏な日常、幸運なアクティビティの中にいると、ついその背中合わせにある危険を認識はしていても、事故った時の結果(外傷)をリアリティーをもってイマジネーションできなくなってくる。今回の視覚的刺激とシミュレーションは、本当によい教訓と戒めになった。

こんな生活の中、唯一の楽しみは、キャンプ内に見つけた小さなクライミングウォールで、授業が終わってから夕食前まで、一手ずつ交替でムーブを決めていくゲームをすること。シューズはないが、できないムーブがあるとくやしくて、いつまでも飽きずに楽しめる。

また、ビデオデッキがあるので、みんなでエクストリームスキーのビデオクリップを見たが、あまりのすごさにガクゼン・・・。彼らは、我々が滑落や雪崩を恐れて、おそるおそるクライムダウンするような雪と岩の壁を、飛んで飛んで飛びまくる。う〜ん・・・うらやましい。価値観の変換を迫られるなぁ。自分の足で登ったところを、ああやって滑り降りられたらどんなに気持ちよいだろう。しかし、彼らはジャンプする時、どうやってその下の危険を予測しているのだろうか?