妙義神社〜表妙義


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report:Miho Igarashi
【DATA】
登った日  2003/4/20(日)
お天気   雨
メンバー   9名
行動時間  約4時間
フリー素材:伸びるライン画像

<アプローチ> 新宿・都庁団体バス発着所から関越自動車道・上信越自動車道経由、約3時間


<ルート> 妙義神社(430m)10:20→第一見晴→第二見晴→あずまや(昼食)12:00到着
      
12:30出発→第四石門13:40→中之岳神社(750m)→妙義山さくらの里14:00

<温泉> 下仁田温泉 荒船の湯 大人3時間500円

<費用> 今回はall inclusive。バス代・昼食代・温泉入浴代、すべて含めて7,000円


Menu * おぎのやのお弁当
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唐突な話だが、上信越道を通ったことがおありだろうか。

頷いている方は思い出していただきたい、関越道からそれて、軽井沢へあとわずかという頃に、妙義山のあのギザギザの中を走ることになる。わたしは初めてあの道を走ったときにその姿を見て以来、あのギザギザに妙に憧れてしまい、いつかあそこへ行ってみたいと思ったのだが、アプローチの意外な悪さと、それから、ギザギザそのものはわたしごときが登れる山じゃないことを知って、高速道路のワインディングを楽しむだけにしていたのだった。(エコ生活を心がける「からっぽクラブ」なんだけど、車の遠乗りだけはやめられない・・・)

だから今回も場所の設定をする際に「妙義山」案が出たときに「無理ぢゃないのかな?」と思っていたのだが、我らが「親分」由美子さんは、「バスツアーにのっかる」という荒技を出してきた。

ずっと、メンバーが自主的に運営する事を目標とし、技術や意識の進歩向上を目指してきた「からっぽクラブ」が、大手旅行代理店のツアーにのっかる・・・・・!?

正直言って、最初はびっくりした。でも、考えてみれば、このツアーは安いし、楽だし、「さくら」も「温泉」ももれなくついてくる。「おいしい」のだ。この柔軟性が魅力なんですね。由美子さんの・・・
無理だと思っていた「妙義山」が見えてくる感じがした。もちろん、ギザギザのてっぺんに行くわけではないのだが。

ああ、そうそう、第四回は4月ということで、「さくら」をお題に行き先を検討したのだった。
さくら、さくら。さくらと、4月の柔らかい、秋よりは低い明るい色の空と、その空にそそり立つギザギザ・・・

を、わたしは期待していたのに・・・

さて、当日の朝、絶望的な天気予報に見送られながら新宿集合。
ひさびさの9名参加。今回は初参加のよこさんもいらっしゃったり、初対面同士がいたり、それぞれ挨拶。せわしなくざわつく団体集合所にあって、「からっぽクラブ」の一隅は花が咲いたようにホンワカして花霞がかかったようである。

バス一台に講師1名、添乗員2名、参加者31名。参加者は予想通り、熟年世代が多い。グループ、カップル、に交じって単独参加の方も数名。どう見ても、平均年齢にして約20歳は「からっぽ」のメンバーの方が若い・・・・ 山を楽しむのに関係ないことだとは思いつつ、だからこそ、こうも偏った年齢構成は、やはりどこかしら不自然だ、などと、独り言ちていた。

全員、時間前に集合したのに、都庁団体バス発着所の混雑のせいで出発は5分遅れる。幸先が悪い。その割には、いつもはうんざりするほど混雑する目白通りが、悪天候のせいか空いていて、あっという間に関越自動車道にはいる。

ほどなく女性添乗員のSさんの「おやすみなさーい」の一声で一同睡眠時間へ。
隣のアマリさんは、しっかり携帯用枕を膨らましている。
なんと用意周到な・・・ 「見習わなくっちゃ」と思うのもつかの間、わたしはこのところの睡眠不足を解消していなかったので、爆睡。

目が覚めると上里SAで休憩。みんなで無料のお茶に並ぶ。このとき、ワダさんとゆりさんはホカホカのお饅頭を握りしめている。頭の芯がまだ寝ぼけていたわたしは、ゆりさんに一口いただき(ありがとー)覚醒。 


マジうま!あつあつのお餅の中にくりが♪


バスの中で、Sさんがコースの説明をする。ご不浄のあり場所を確認し、行かれるときにはそれほど意識がなくても必ず行くことを促し、またエチケット袋のようなものを配りながら、コース途上で「お花摘み」をせざるを得なくなったときには必ずペーパーを持ち帰ることを推奨する。特にティッシュペーパーがロールペーパーよりも分解されるのに時間がかかることまで説明している。こうしてツアー登山者の意識向上を図っているのだろう。山を、自然を、愛している人なのだということ、そして、否、だからこそ「汚さないで」という強い思いが、穏やかで丁寧な言葉の中から伝わってくる。

松井田妙義ICで高速道路をおりる。いよいよという頃になって雨足が強くなる。釜飯で有名な「おぎのや」で昼食を搬入するために再度休憩した頃には雨具の着装をとの指示があった。

スパッツの付け方は二通りあって、雨具のオーバーパンツの下につけると、靴の中へ水の進入を防げるのによく、上につけると雨具のオーバーパンツの汚れを防ぎ、つまりは雨具の傷みを防ぐのによい・・・どちらにするかは、個人の判断に任せるとの指導もあった。

昼食が配られる。紙製のコンパクトな包装のお弁当。
「よかったー、釜飯担いで雨の中歩くんだったら、かなわないと思ってたんだー」
愚かにもわたしは、かの有名な「峠の釜飯」のことしか頭になく、陶製の釜飯の器を担いで歩く己の姿を想像して、青くなっていたのだった。

   


さて、いよいよ登り始める。登山口が神社のお社なので、始めに凶悪な石段をたくさん登る。どなたが祀られているのか分からないが、兎に角登り切った所にある祭殿でお参りをし、準備運動をする。その後、一行は三班に別れて、一班・二班・三班の順に出発。

この班分けは、バスの中で発表されていたもの。「からっぽクラブ」がバラバラになったら、レポートが書きにくいと思っていたが、「大久保さまのグループが三班となります。」ということで一安心。「からっぽクラブ」としては先頭がアマリさんで、由美子さんが最後尾。

雨はドンドンひどくなるが、足下は思ったほどにはぬかるんでおらず、悪くない。しかし道幅は狭く、「このコースを『ふれあいの道』っていうのは、対向者とすれ違うとふれあうから?」という冗談も飛び交う。
「金時山」のとき、実は時々ちょっと辛そうにわたしの後ろを歩いていたあっきーさんも、今回は元気。「からっぽクラブ」はみんな元気!

バスを降りてから40分、妙義神社を出てから25分ほど経った頃、「大黒の滝」で休憩がはいる。水分を補給し、衣服の調節をする。まだ幾らも歩いていないが、体はけっこう温まっており、雨具を着ているせいかそれなりに汗をかいているので、丁度良いタイミングなのだと思った。長距離走だって最初のDead pointは5分後くらいだもんね。「最初の休憩は早めにとった方がよい」って、覚えておこう。

再出発。添乗員のSさんがすぐ近くを歩きながら花の名を教えてくださる。何でもご存じなので、みんなで調子に乗ってかわるがわる花の名を尋ねる。何度聞いても覚えられず何度も聞き返し、また9人がそれぞれに同じ花の名を尋ねるにも拘わらず、にこやかに答えてくださる。
なんて素敵な方だろうか・・・ 斯くありたいものだ・・・ と思いながら歩く。

     
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 Photo by Kyo Wada


覚えた花は、


ミミガタテンナンショウ・・・クロユリのような色の苞(ほう)をもった花

ミツバツチグリ・・・・・・・地を這うように生えていた、黄色い花

ケマルバスミレ・・・・・・・白いスミレ 花びらが丸め

タチツボスミレ・・・・・・・一番一般的なスミレ 葉がハート形

ミヤマキケマン・・・・・・・ケマンの一種 黄色い花

キブシ・・・・・・・・・・・樹木。薄緑から黄色がかった葡萄の房のような花

アブラチャン・・・・・・・・樹木。小さいけれどはっきりとした黄色の花

ワダソウ・・・・・・・・・・スミレくらいの大きさの草花で、しろい控えめな花

ワチガイソウ・・・・・・・・ワダソウとそっくりの花。わたしたちが見たのはヒゲネワチガイソウでは?

ヤブレガサ・・・・・・・・・ほんとに破れ傘を広げて立たせたみたいな草

   
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         Photo by Kyo Wada

ゆりさんは今回も清掃登山用にゴミ袋を用意していて、わたしも拾ってはその中に入れさせてもらっていたら、Sさんが自分も湯ノ丸で清掃登山を続けていると話してくださる。山の話、山の草花の話をするときのSさんは、本当に少女のように夢中で、幸せそうで、輝いている。そういえば、余談ながら湯ノ丸山は高原の登山口からして花のきれいな山だし、高峰高原まで抜ける湯ノ丸林道沿いの池ノ平湿原のコマクサもよい。

雨は、次第に小止みになって雨具のフードをあげても帽子さえかぶっていれば歩けるようになった。今日のコースには「第一見晴」とか「第二見晴」とか、眺望の良いポイントがいくつかあるようだけれど、このガスの中では、望むべくもない。

しかしながら嘆くなかれ、芽吹いたばかりの新緑のあいまを、ミストの粒子までもが見えるように靄が浮遊したり、汚れた手を常緑樹の葉末が含んだ雨水で洗い流したり、そこら中の岩から水が滲み出ていたり、水と緑の日本、あるいは水と緑のこの星を体感するに、これほど満足のいく日は他にあるや否や。

そうこうしているうちに、四阿のある、一寸開けたところに出る。丁度12時。
「先生、スゴイ、ぴったりですね。」とSさんが講師に話しかける。ここで昼食。
敷物を持ってきた人が3人、アマリさん、由美子さん、よこさん。そこに、みんなが座らせていただいて「いただきまーす」

「おぎのや」のお弁当は、おむすび弁当。のりのおむすびが二つと焼きむすびがひとつ。この三つがお行儀良く並んだ小さな箱の上に、煮物・焼き物・香の物が彩りよく収まったおかずの箱がついている。おかずはかの有名な釜飯の上にのっている品々を思い出していただければほぼ間違いはない。コンパクトな割に、味、量ともに満足のいくものだったと思う。なんといっても用意してもらったお弁当というのは、ウレシイのだ。

食べ終わって、持参した暖かい紅茶をゆっくり飲もうとしていたら、今来た方角から人の声がする。それも、かなりな人数のようだ。なんと、同じツアーの大宮だか、池袋だかを出発したグループだとのこと。なんで、鉢合わせになるようなスケジューリングをするのかな・・・。

   


のんびりする間もなくあたふたと出発。こんどは第三班「からっぽクラブ」が先頭。そして、この先に鉄梯子と鎖場が待っているわけ。Sさんは、今度はわたしたちの後ろを歩くことになったため、もう花の名は聞けず、一寸寂しい。講師氏は「からっぽクラブ」の先頭のアマリさんに話しかけているけれど、時折聞こえてくる限りでは話題は四方山話、同世代と話をするのと勝手が違って、彼としても何か話さなければならないと思いながら話題に困っているのかも知れない。黙々と歩きながら、山と水と緑の奏でるしずかな音楽を聴くのでも、わたしたちには充分なのだと言ってあげたい。

講師氏は話をしながらも、せり出した岩や、木の枝、足下など、後続の参加者に向けての注意を怠らない。わたしたちも伝言ゲームのように、後ろの人々に伝えていく。雨具のフードのために視界が悪い今日のような日には、先行者がこうして伝えていくのが危険回避のために大事なのだろう。

鉄梯子が現れた。片側、或いは両側とも絶壁だったりもして、天気が良かったら、さぞかし眺めも良い代わりに、恐怖感も味わえたことだろう。みな無口になって歩いている。長い長い梯子の道がおわり、もう少しで鎖場というところでおあつらえ向きに雨が戻ってきた。だんだんひどくなる雨の中、鎖場を下りることになり、講師氏が手本を示す。二本ある鎖のうち、手前の一本を選び、壁面に足裏をフラットにして、上体を起こして下りることがポイントだとのこと。参加者もひとり、またひとり、下りていく。恐怖からかどうしても、上体が斜面の方に前のめりになる人がいる。そうすると自然に足裏がフラットにならず、つま先だけで捉えるようになるのが、上から見ていても分かる。

「からっぽクラブ」も、毎日ジムに通ってクライミングをしているゆりさんがまず下りる。流石に造作なく下りていて、危なげがない。だんだん雨足がひどくなり、アマリさんに「あっちの鎖は?」と奥の鎖を指さすと、「講師の方が、こっちって仰ったんですよ」とのこと。雨はドンドン降ってくるし、狭い岩場で待っているのも、一本で31人が下りるのも、如何なものかと思っていると、由美子さんは講師氏の選んだ鎖を「こっちの方が練習にはなるよ」と言いながら、空いている奥の鎖を下りていく。以後「からっぽクラブ」一同は二手に分かれて下りることに・・・ わたしは手がかじかむので普通の軍手をしていて、外すのをためらっていたら、由美子さんが気づいて「滑り止めがついているならいいけど、外さないと」とNG。

           

鎖場を無事に通過、第四石門で小休止。由美子さんが先日の四万十川・黒潮エコライフ・フェアに参加したときに入手した土佐文旦で作った「超スローフードな」砂糖漬けを配ってくださり、みんなで頬張る。ほんのり上品な酸味と甘さに、生き返る心地も束の間、後続のグループと鉢合わせないために出発。

このあとは、ダラダラとした下り。ゴロゴロとした石が多く、雨のせいですべるし、足下の確保に気が抜けない。わたしは膝に問題があるため、やはり、最後まで緊張感を持ってのぞまないといけないと思う。健脚のイネコさんも膝に不安があって下りは苦手だそうだ。みんなも結構苦心して下りたみたいだが、何しろ無事に中之岳神社まで下山。
   


「さくらの里」は六〜八分咲きくらいで、丁度良い加減。さくらは満開よりは一寸前とか、咲き始めとか、散りはじめの方が趣のあることくらい、清少納言に言われなくたって、みんな感じているんじゃないかと思う。Sさんによれば、50種類、2万本のさくらがあるのだとか・・・ 後続グループとの申し合わせで、一刻も早く温泉に行かねばならないとのところを、お願いして一寸だけ園内を散策。こういうときに、ツアーの煩わしさを感じる。

平地を歩くと思わぬことに目がいくのか、あっきーさん、よこさん、ななさんの仲良し三人組がドレスコードを決めたみたいに、そろってオレンジ系でウェアをまとめていることに気がついた。本人たちも「別に申し合わせたワケじゃないんですよー」といいながらも、「だんだん似てくるものなんですかねぇ」と納得している。

もっとゆっくりさくらを見たい気持ちを抑えてバスに戻り、いざ温泉へ。
いい汗かいたあとの温泉は、大変気持ちがよい。それにしたって、信じられないほどの混雑ぶり・・・ 「荒船の湯」は、普通の湯船の他に、浅めの子供風呂、露天風呂、サウナ、泡風呂があるが、観光客だけではなく、地元の方々が憩いの場として使っているといった感じでもある。

個人的には泡風呂が良かった。結構アワの威力は強力なのか心地よく、筋肉がほぐれる。ずるずると弛緩していくからだから、魂が抜け出て自分たちを俯瞰している。

温泉の入り方ひとつでも(こんな所だからこそ?)個性がでるもので、一通り設備をチェックしてから入浴する人、とりあえずその時一番空いている種類のお風呂に入る人、兎に角お湯に入る人、さっさと入ってさっさと上がっておもてでのんびりする人・・・
9人9色である。年齢も生活基盤もさまざまな個性が集まっていて、でも、みんな同じようにひとつのある山に向き合っている。そんなことを考えていると、うまく説明はできない不思議な、でも暖かい感覚がわきあがってくる。

温泉からあがってロビーで記念撮影をする。雨は相変わらず止まないし、雲が厚くてギザギザを見上げることもできないが、雨の山の味もちょっぴり知って、すっかりいい気持ちである。やがて夢の世界の人となった一同を乗せて、バスは下仁田ICから一路新宿へとひた走るのであった。(おわり)

   
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