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report:Kyo Wada | ||||||||||||
【DATA】 滑った日 2003/2/16(日) お天気 雪のち晴れ メンバー 4名 行動時間 約3.5時間 |
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Menu * チーズフォンデュ |
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7:30浅草発、特急けごん1号の車中で集合。目的地は終点である東武日光駅。日光ミニフリーパスというチケットを購入(4940円)する。これで往復の電車代&バス代すべて込み。ほかに、行きは特急券(1420円)も必要。事前にチケットを手配できなかったので、浅草で直接購入することにしたのだが、買えるかどうか少し心配だった。大久保さんの情報によれば“ガラ空き”ということだったので、多分問題ないとは思ったものの、万が一乗れなかったら最悪なので、念のために30分前に到着する。座席の予約が無事済んで、ちょっと一息、したいところだったけど、朝の浅草なんてお茶する場所も何もない。仕方がないので早めにホームに入って待つことにした。 浅草で乗ってくるのは私だけなのだろうか? あたりには見覚えのある顔がない。電車がホームに入ってきた早々に座席に座る。やや興奮気味のため朝の5時から目が覚めてしまっていたので、電車に乗り込んだ時点ですでにけっこう疲れていたのだ。座席に沈みこんで、持参のチーズケーキとともに、テルモスに入っているコーヒーを少し飲みながら寛いだ。……とこれがあまりにもおいしくて、現地に到着するまでに飲み干してしまいそうなほどだった。実は今回の「からっぽクラブ」、個人的に“うまいもの追求”をテーマにしていたので、早朝、コーヒーを豆から挽いて淹れてきたのだ。凝り性の私は、豆も評判の店から取り寄せている。余談だが、このように丁寧に淹れたコーヒーは、夕方になっても(さすがに温度は下がったものの)香りはあまり落ちていなかった。ってことは、缶コーヒーってたいした豆を使ってないのかもね。 そんなふうに至福を味わっていると、北千住から乗車した大久保さんが私を探しにきた。向こうの席が空いているとのことだったけど、すっかり自分の席に根が生えてしまったので、そのまま終点の東武日光駅まで一人で座っていた。朝の日光の気候は、ちょっと寒いかな、という程度。しかし晴れる気配はなく、太陽の下でのクロカンを楽しみにしていたわれわれにとっては少々残念な天気だった。びっくりしたのは、奥日光までのアクセスであるバスが、朝から長蛇の列だったこと。30分に1本しか走っていないので、もし着席できなくても乗るしかない、と覚悟を決めつつ乗ったのだが、なんとか座席を確保することができた。バスの行程は約70分。ここで座れなければけっこう辛かったかもしれない。 |
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日光観光の外国人の姿も多し。 |
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満員のバスの乗客の大半が、われわれと同じクロスカントリースキー場に向かっているように私には見えた。クロカン愛好者は通常のスキーよりも年齢層が高い。“山慣れ”した感じの夫婦などが目立った。車中に気軽にスキーを持ちこむ姿もけっこう見られる。あとで分かったことだけど、クロカンは通常のスキーよりも軽装でできるし、機材も軽いからなのだろう。チェーンを装着したバスはゆっくりと高度を上げつつ進み、あたりは雪が深くなってきた……と期待したいところだったけど、雪は思ったほど積もっておらず、「これじゃ先週行った長野のほうがよっぽどいいよ」なんて隣りに座った大久保さんにぶつぶつ言ってみたり。 だけど当日の天気は雪。期待したほど積もっていなかったとはいえ、雪の中を滑るためにはそれなりの装備が必要だ。その時ふと、長袖Tシャツにフリース、そしてスキー用のジャケットのみというとんでもない軽装でやってきた自分に気がついた。それは、“暑いとき”のことしか想定していなかったということと、“うまいもの追求”のためにチーズフォンデュの材料を揃えることで頭がいっぱいだったため。追加のセーター一枚は必要だったなあと、降りつづける雪を見ながらちょっと反省した。まあ本日は、寒く感じる暇もないくらい動きつづけるという作戦でいけばいいか。 心の底にドキドキを抱えながら、10時30分過ぎ本日の目的地である「光徳温泉」にバスが到着。ここで同乗の客の大半が降りた。ということは、スキー場、混んでそう。事前に電話で問い合わせしたところ、「更衣室がありますよ」ということだったのだが、スキーのレンタルルームにあったのは、試着ボックスのような、単なる囲い。男女混合の着替え場所で慌しく支度する。ロッカーに荷物を入れ、食事など必要な物だけ持って滑る体勢に入れたのは11時くらい。帰りのバスは3時半なので、大急ぎのスケジュールなのだ。 ところで、クロスカントリースキーは通常のスキーとはちょっと勝手が違い、みんな戸惑った。スキー靴よりも可動性が高く、柔らかい靴の先に金具がついており、その金具をスキーにひっかけて留めるのだ。スキーと靴の接点はつま先1カ所だけ。ガチャンと踏めばセッティングOKのスキーよりも、ストックの先で金具を操作して留めるクロカンスキーは難しい。おまけにエッジがないスキー板は、ゆらゆらとどこかに流れていってしまいそうになる。そんなわけで、靴をスキーにセットするだけで一苦労。 |
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なんとか板を装着して、いよいよフィールドへ! 看板はそんなに親切でもないので、要注意! |
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ゲレンデ(というかフィールド)に入るためには車道の脇を歩かなければならない。少し前に凍ったのだろうか、ツルツルに固まった雪の上を、エッジのないスキーで歩くのってかなり恐い。おまけに車はけっこう入ってくるし。大通りを渡るときには、安全のために一度スキーを外して歩いていった。その後フカフカの雪の上でスキーを装着するためにかなり難儀することに。クロカンのいちばんの苦労は、スキーの脱着。これって、今回のスキーに参加したメンバー全員が感じてたことじゃないだろうか。少なくとも、私はそうだった。 しかし、いったん滑り出してしまえば爽快だった。混んでいるとはいっても、アルペンスキー場のゲレンデとは違い、広いぶん人口密度が圧倒的に少ない。何より嬉しいのは、やかましいスピーカーがないこと。耳を澄ましても聞こえてくるのは木々を渡る風の音だけ、という体験は通常なかなかできるものではない。スキー場に入ってすぐの場所にあるのが鴨が泳ぐ光徳池。雪に彩られた山を背景に、できすぎたような光景だった。みんな、記念撮影をしている。その後われわれは、水墨画のような景色を見ながらコース探しに入ったのだけど……。スキー場のサイトからプリントアウトしてきた地図が使えなくて、当初の予定だったフィールドの奥に入るという案は途中であきらめ、ブナ、シラカバ、カラマツなどの木立の中を気ままに動き回ることになった。目的の場所に行きつくことができなかった大久保さんは残念そうだったけど、10数年ぶりのスキーと林の中を気分が赴くままに歩き回ることができるというそれだけで私は満足。向山さんも藤原さんも、歓声を上げながら滑っていた。 |
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コース脇にそびえる大きなブナの樹にがばーーーっとだきついて、「あったか〜〜〜い!!!」 | |||||||||||
だけどクロカンは思ったよりもハードなスポーツだ。やってみるまでは気がつかなかったけど、転んだらものすごく痛いし、立ち上がるのがこれまた大変なのだった。この理由の一つは、スキー板にエッジがないということだろう。エッジを効かせて衝撃を加減したり、立ちあがる際の始点にする、ということができないから、すべて自分の体(筋力)で受け止めなかればならない。当然、体力の消耗は激しい。スキーなら気楽に滑ることができる角度でも、クロカンなら“恐怖”という感じ。もちろん、慣れていないからということもあるだろうけど、ボーゲンだろうがなんだろうが、「止まらない!!!」のだから。でも、ゆるい下り坂をひたすら降りていたりすると、なんともいえず楽しくなってくる。 一度、たまらなく爽快な気分がやってきて、隣りで滑っていた大久保さんに、「私、今、日本では珍しく“フロー”を感じている」と話しかけてみた。フローというのは、大久保さんの大学院での研究テーマでもある。私なりの解釈では、「至高感覚」というところだろうか。そこで二人でフローの条件について話し合ってみた。1)あまりハードすぎない肉体的負荷が、ある一定期間持続していること、2)自然の中にいること、で一致した。付け加えると、非日常であること、だろうか。そもそも海外にいること自体が非日常なので、海外ではフロー感覚に出会いやすいのだろう。 フローもさることながら、私の大きな関心は“チーズフォンデュ”。大久保さんは雪でテーブルと椅子を作るためにスコップまで持ってきていたけど、雪も降りつづけているため、ちょっと色気がないけど橋の下で食べることにした。少しでものんびりしたら寒いので、大慌てで火を起こし、鍋にフォンデュミックスとワイン、そしてガーリックを入れる。フォンデュはエメンタールとグリュイエールをほぼ半量づつ混ぜても作れるのだけど、面倒くさいからとミックスを持ってきて正解。寒くて調合などしていられない。適当に白ワインを注ぎ込むと、ほとんど待たずしてチーズが溶けてきた。これじゃラーメンよりできあがりが早いかも。 具材として用意したのは、フランスパン、ブロッコリー、小じゃがいも、プチトマト。いずれも下ごしらえ済み。とりあえず、それぞれパンをチーズに浸して口に運ぶ。「あっ、ワインが強い!」と藤原さん。そう、適当に注いだから、ワインの分量がかなり多かったのだ。ちょっとゆるすぎるかな、ということで小麦粉で調整。食べ始めると止まらない。鍋いっぱいのチーズは多すぎたかも、という心配は無用で、4人でちょうどの量だった。地面に置いた鍋を囲むようにして、溶けたチーズに好みのものを浸して口に運ぶ。あっという間に減っていくチーズを見るのは楽しかった。食べているときは夢中になって気がつかなかったけど、食べ終わってみるとあたりは相当寒かった。だからフォンデュにして大正解。おいしいし、暖まるし。食べ終わるや否や寒さが襲ってきたので、残ったワインを4人で少しづつ分ける。こんなときにはきっと甘いリキュールなどがおいしいだろう。 |
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見渡すと、雪がいよいよ激しく舞っている。食べ終わるとすぐ撤収してまたスキーの装着だ。何度やってもうまくいかず、かなり辛い作業。後半はスタート地点である光徳池に戻って、そのまま雪の牧場に入る。新雪の中をせっせと歩くのは、まるで「大草原の小さな家」の登場人物になったような気分で愉快。牧場を越えてふたたびコースに入り滑りだしたのだが、ナナさんがちょっとお疲れ気味だったので、ここでいったん終了し、温泉に入ることにした。後半のコースの近くに温泉があるらしく、強いイオウの匂いに抵抗できなくなった、ということもある。 ここの温泉は、イオウが強くて温度も高い。みるからに「効きそう」なお湯だった。湯元が近いせいか、源泉掛け流しというぜいたくさ。1000円支払ったけど、このロケーション、シチュエーションなら、払う価値は大いにある。源泉の湯温は高かったけれど、気温が低いためだろう、露天風呂はいつまでも入っていられる温度。雪が舞う中での露天風呂はほんとに天国! 調子にのった私は雪を手に取ったり、果てには雪の上に座ったりして遊んでいた。雪には、童心に還らせてくれる何かがある。 温泉に入ったホテル・アストリアはサービスがよく、入浴後にお茶や甘酒なども楽しめる。ロビーで一息ついたらすでにバスがくる時間だった。運よく帰りも皆座ることができた。スキーと温泉のあとはもう爆睡だ。前の席に座った大久保さんは、びっしりと結露した窓に頭をつけて眠りこけていたけど、それも当然というかんじ。帰りの電車の窓からは不思議なくらい晴れ渡り、澄みきった夕焼けが見えた。雪は降り尽くしてしまったのだろう。最後であるにせよ、美しい空を見ることができて満足だった。でも、こんどは1泊したいかな。(おわり) |
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