没入体験の性質とその影響に関する考察 〜フロー理論を中心にして〜


2003年度 早稲田大学大学院 人間科学研究科 修士論文
第3章(アンケート調査に関する章)のダイジェスト

目次

1. はじめに
2. フローとは
3. 過去の没入体験とその効果に関する調査
4. 没入特性と自己実現傾向に関する調査
5. まとめ

要旨

@没入体験は一般的に、明確な目標に向かって、時を忘れるほど注意を集中し、行為そのものが目的になっている状態ととらえられており、快感情と「再び、その体験をしたい」という動機づけをうながすものである。

Aフロー状態の程度は、対象となる活動の経験の長さによって変化する。
→新規な体験や一回性の体験を除いて、対象となる活動の熟練がフロー状態の深化に関わる可能性が示唆された。

Bフロー状態、ピーク状態の程度は、対象となる活動の種類によって変化する。
→「ゲーム」による没入は、フロー度は高いもののピーク度は低く、自己や環境への肯定感のような深い効果はともないにくい。
→「受験・資格勉強」による没入は、目標ははっきりしているものの、行為そのものが目的となりにくく、快感情や動機づけをともないにくい。

Cフロー体験快感情動機づけと関連が深く、ピーク体験自己や環境への肯定感創造的能力の拡大と関連が深い。

D没入体験の後に快感情と動機づけを産み出す要素は、その経験自体から内的な報酬が得られていると認知されていること、「うまくいっている」という正のフィードバックをともなっていること、行為に注意を集中していることである。

E日頃から明確な目標を持っている人ほど、自己実現傾向が強く、加えて自分の行為を統制できる人、「うまくいっている」という正のフィードバックを得ている人ほど、充実感を感じている。
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